バレエダンサーにとって、“膝が入る”ことはとても大切な要素だと感じています。膝が入ることで足の美しいラインがでるので、“もっとラインを綺麗に出したい”、“足を長く魅せたい”という表現も私とのトレーニングセッションの時にもダンサーからよく聞きます。その度に、からだの隅々まで気にかけながら踊るダンサー達に感心するばかりです。膝が入りながらも膝が安定していれば良いのですが、なかなかそうもいかないこともあります。私が対応するダンサー達の多くの膝は“反張膝“で膝が過伸展している状態です。この”反張膝“であることで、トレーナーとして気になることがいくつかありますが、今回はそのポイントを2つほどお話ししたいと思います。

1つは反張膝であることで、膝が後外側方向へ落ち込みやすくなります。この影響で膝を安定させるための大腿四頭筋に力が入りにくくなります。大腿四頭筋の中でも内側広筋は膝を安定させるために大切な筋肉の1つですが、反張膝の影響で力が入りづらくなりボリュームも小さくなります。“力が入らない”、または“ボリュームが小さい”ダンサーは安定感が劣ります。経験上ではありますが、反張膝でも内側広筋がしっかりあるダンサーはトレーニングだけでなく、パフォーマンスにおいても安定した踊りを披露しているように感じています。膝を安定させるためには、殿筋もそうですが、前腿である大腿四頭筋の強化は必要です。けがの予防の観点からもバレエダンサーはターンアウトしているのでパラレルでのジャンプ着地より難易度は高くなりますので、更に膝とつま先を揃えるためにも大腿四頭筋の強化はとても重要になってきます。

もう一つ気がかりなのが、プリエのように膝を屈伸させるときの“タイミング”です。膝が入り過ぎることで、足関節と股関節とタイミングよく屈伸できなくなっているケースが多いです。特に膝を伸ばす時には、過度な膝の伸展があります。ですから、踊りの中でもプリエから伸びる時に足関節や股関節をあまり使わずに、“膝の伸びだけ”で動いてしまうことが多いと思います。その結果、ジャンプなどでも必要な股関節の伸展動作を膝の伸展動作で代償してしまいますので、高いジャンプや片足立ちへの動きの安定が劣ってしまいます。

構造的なものは変えられませんが、筋肉がつきにくい状態になっているところは強化ができます。まずは自分の膝がどうなっているか?ジャンプの着地で膝が安定できているか?プリエからの伸びのタイミングなどを確認してもらうことが大切だと思います。そうすることで、“なぜ前腿の力が必要か”を理解できると思います。

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